いうわけは、はじめカン蛙を見たときは、実はゴム靴のほかにはなんにも気を付けませんでしたので、三疋ともはだしでぞろりとならんでいるのでは実際どうも困ってしまいました。そこで仕方なく、
「もっと向うへ行かないと、よくわからないわ。」と云いました。
「そうですとも。間違《まちが》っては大へんです。よくおちついて。」と仲人《なこうど》のかえるもうしろで云いました。
ところがもっと近くによりますと、尚更《なおさら》わからなくなりました。三疋とも口が大きくて、うすぐろくて、眼《め》の出た工合《ぐあい》も実によく似ているのです。これはいよいよどうも困ってしまいました。ところが、そのうちに、一番右はじに居たカン蛙がパクッと口をあけて、一足前に出ておじぎをしました。そこでルラ蛙もやっと安心して、
「あの方よ。」と云いました。さてそれから式がはじまりました。その式の盛大《せいだい》なこと酒もりの立派なこととても書くのも大へんです。
とにかく式がすんで、向うの方はみな引きあげて行きました。そのとき丁度雲のみねが一番かがやいて居《お》りました。
「さあ新婚旅行だ。」とベン蛙がいいました。
「僕たちはじきそ
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