烏の北斗七星
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)判《わか》らない
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|疋《ひき》
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つめたいいぢの悪い雲が、地べたにすれすれに垂れましたので、野はらは雪のあかりだか、日のあかりだか判《わか》らないやうになりました。
烏《からす》の義勇艦隊は、その雲に圧《お》しつけられて、しかたなくちよつとの間、亜鉛《とたん》の板をひろげたやうな雪の田圃《たんぼ》のうへに横にならんで仮泊といふことをやりました。
どの艦《ふね》もすこしも動きません。
まつ黒くなめらかな烏の大尉、若い艦隊長もしやんと立つたまゝうごきません。
からすの大監督はなほさらうごきもゆらぎもいたしません。からすの大監督は、もうずゐぶんの年老《としよ》りです。眼が灰いろになつてしまつてゐますし、啼《な》くとまるで悪い人形のやうにギイギイ云《い》ひます。
それですから、烏の年齢《とし》を見分ける法を知らない一人の子供が、いつか斯《か》う云つたのでした。
「おい、この町には咽喉《のど》のこはれた烏が二|疋《ひき》ゐるんだよ。おい。
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