自信があった。けだし音楽を図形に直すことは自由であるし、おれはそこへ花で Beethoven の Fantasy を描くこともできる。さう考へた。
そこでおれはすっかり舞台に居るやうなすっきりした気持ちで四月の初めに南の建物の影が落ちて呉れ〔る〕限界を屋根を見上げて考へたり朝日や夕日で窓から花が逆光線に見えるかどうか目測したりやってから例の白いほうたいのはじで庭に二本の対角線を引かせてその方庭の中心を求めそこに一本杭を立てた。
そのとき窓に院長が立ってゐた。云った。
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(どんな花を植えるのですか。)
(来春はムスカリとチュウリップです。)
(夏は)
(さうですな。まんなかをカンナとコキア、観葉種です、それから花甘藍と、あとはキャンデタフトのライラックと白で模様をとったりいろいろします。)
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院長はたうたうこらえ兼ねて靴をはいて下りて来た。
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(どういふ形にするのです?)
(いま考へてゐますので。)
(正方形にやりますか。)[#ここで字下げ終わり]どういふ訳か大へんにわかにその博士を三人も使ってゐる偉い医学士が興奮して早
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