てゐましたからね、レールだけは敷かなくてもまあ敷地だけは橋場に届いたんです。そのうちたうとう十二月に入ったでせう。雪も二遍か降りました。降っても又すぐ消えたんです。ところが、十二月の十日でしたが、まるで春降るやうなポシャポシャ雨が、半日ばかり降ったんです。なあに河の水が出るでもなし、ほんの土をしめらしただけですよ。それでゐて、その夕方に又あの丁場がざあっと来たもんです。折角入れた乱杭もあっちへ向いたりこっちへまがったりです。もうこの時はみんなすっかり気落ちしました。それでも又かといふやうな気分で前の時ぐらゐではなかったのです。その時はもうだんだん仕事が少くなって、又来春といふ約束で人夫もどんどん雫石《しづくいし》から盛岡《もりをか》をかかって帰って行ったあとでしたし、第一これから仕事なかばでいつ深い雪がやって来るかわからなかったんですから何だか仕事するっても張りがありませんや。それでも云ひつけられた通り私たちはみんな、さう、みんなで五十人も居たでせうか、あちこちの丁場から集めたんです。崩れた処を掘り起す、それからトロで河原へも行きましたが次の日などは砂利が凍ってもう鶴嘴《つるはし》が立
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