その下からは大きな灰いろの四本の脚《あし》が、ゆっくりゆっくり上ったり下ったりしていたのだ。
ペムペルとネリとは、黒人はほんとうに恐《こわ》かったけれど又|面白《おもしろ》かった。四角なものも恐かったけれど、めずらしかった。そこでみんなが過ぎてから、二人は顔を見合せた。そして
『ついて行こうか。』
『ええ、行きましょう。』と、まるでかすれた声で云ったのだ。そして二人はよほど遠くからついて行った。
黒人たちは、時々何かわからないことを叫《さけ》んだり、空を見ながら跳《は》ねたりした。四本の脚はゆっくりゆっくり、上ったり下ったりしていたし、時々ふう、ふうという呼吸の音も聞えた。
二人はいよいよ堅《かた》く手を握《にぎ》ってついて行った。
そのうちお日さまは、変に赤くどんよりなって、西の方の山に入ってしまい、残りの空は黄いろに光り、草はだんだん青から黒く見えて来た。
さっきからの音がいよいよ近くなり、すぐ向うの丘のかげでは、さっきのらしい馬のひんひん啼《な》くのも鼻をぶるるっと鳴らすのも聞えたんだ。
四角な家の生物が、脚を百ぺん上げたり下げたりしたら、ペムペルとネリとはびっくりし
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