《くぐ》ったら不思議な音はもう切れ切れじゃなくなった。
そこで二人は元気を出して上着の袖《そで》で汗《あせ》をふきふきかけて行った。
そのうち音はもっとはっきりして来たのだ。ひょろひょろした笛《ふえ》の音も入っていたし、大喇叭《おおらっぱ》のどなり声もきこえた。ぼくにはみんなわかって来たのだよ。
『ネリ、もう少しだよ、しっかり僕《ぼく》につかまっておいで。』
ネリはだまってきれで包んだ小さな卵形の頭を振って、唇を噛《か》んで走った。
二人がも一度、樺の木の生えた丘《おか》をまわったとき、いきなり眼《め》の前に白いほこりのぼやぼや立った大きな道が、横になっているのを見た。その右の方から、さっきの音がはっきり聞え、左の方からもう一団《ひとかたま》り、白いほこりがこっちの方へやって来る。ほこりの中から、チラチラ馬の足が光った。
間もなくそれは近づいたのだ。ペムペルとネリとは、手をにぎり合って、息をこらしてそれを見た。
もちろん僕もそれを見た。
やって来たのは七人ばかりの馬乗りなのだ。
馬は汗をかいて黒く光り、鼻からふうふう息をつき、しずかにだくをやっていた。乗ってるものはみな
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