ました。
「お早う。ペムペルという子はほんとうにいい子だったのにかあいそうなことをした。」
その時窓にはまだ厚い茶いろのカーテンが引いてありましたので室《へや》の中はちょうどビール瓶《びん》のかけらをのぞいたようでした。ですから私も挨拶《あいさつ》しました。
「お早う。蜂雀。ペムペルという人がどうしたっての。」
蜂雀がガラスの向うで又《また》云《い》いました。
「ええお早うよ。妹のネリという子もほんとうにかあいらしいいい子だったのにかあいそうだなあ。」
「どうしたていうの話しておくれ。」
すると蜂雀はちょっと口あいてわらうようにしてまた云いました。
「話してあげるからおまえは鞄《かばん》を床《ゆか》におろしてその上にお座《すわ》り。」
私は本の入ったかばんの上に座るのは一寸困りましたけれどもどうしてもそのお話を聞きたかったのでとうとうその通りしました。
すると蜂雀は話しました。
「ペムペルとネリは毎日お父さんやお母さんたちの働くそばで遊んでいたよ〔以下原稿一枚?なし〕
その時|僕《ぼく》も
『さようなら。さようなら。』と云ってペムペルのうちのきれいな木や花の間からまっす
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