笑い声が起り、それからわあわあはやすのです。白や茶いろや、狐の子どもらがチョッキだけを着たり半ズボンだけはいたり、たくさんたくさんこっちを見てはやしているのです。首を横にまげて笑っている子、口を尖《とが》らせてだまっている子、口をあけてそらを向いてはあはあはあはあ云う子、はねあがってはねあがって叫んでいる子、白や茶いろやたくさんいます。ああこれはとうとう狐小学校に来てしまった、いつかどこかで誰《たれ》かに聴《き》いた茨海《ばらうみ》狐小学校へ来てしまったと、私はまっ赤になって起きあがって、からだをさすりながら考えました。その時いきなり、狐の生徒らはしいんとなりました。黒のフロックを着た先生が尖った茶いろの口を閉じるでもなし開くでもなし、眼《め》をじっと据《す》えて、しずかにやって来るのです。先生といったって、勿論《もちろん》狐の先生です。耳の尖っていたことが今でもはっきり私の目に残っています。俄かに先生はぴたりと立ちどまりました。
「お前たちは、又わなをこしらえたな。そんなことをして、折角《せっかく》おいでになったお客さまに、もしものことがあったらどうする。学校の名誉《めいよ》に関する
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