り、窪《くぼ》みにどんと足を踏《ふ》みこんだりしながらも、一生けん命そっちへ走って行きました。
すると野原は、だんだん茨が少くなって、あのすずめのかたびらという、一尺ぐらいのけむりのような穂を出す草があるでしょう、あれがたいへん多くなったのです。私はどしどしその上をかけました。そしたらどう云うわけか俄かに私は棒か何かで足をすくわれたらしくどたっと草に倒《たお》れました。急いで起きあがって見ますと、私の足はその草のくしゃくしゃもつれた穂にからまっているのです。私はにが笑いをしながら起きあがって又走りました。又ばったりと倒れました。おかしいと思ってよく見ましたら、そのすずめのかたびらの穂は、ただくしゃくしゃにもつれているのじゃなくて、ちゃんと両方から門のように結んであるのです。一種のわなです。その辺を見ますと実にそいつが沢山《たくさん》つくってあるのです。私はそこでよほど注意して又歩き出しました。なるべく足を横に引きずらず抜きさしするような工合《ぐあい》にしてそっと歩きましたけれどもまだ二十歩も行かないうちに、又ばったりと倒されてしまいました。それと一緒《いっしょ》に、向うの方で、どっと
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