の時校長さんは、かくしから時計を出して一寸見ました。そこで私は、これはもうだんだん時間がたつから、次の教室を案内しようかと云うのだろうと思って、ちょっとからだを動かして見せました。校長さんはそこですっと室《へや》を出ました。私もついて出ました。
「第二教室、第二年級、担任、武池清二郎」とした黒塗りの板の下がった教室に入りました。先生はさっき運動場であった人でした。生徒も立って一ぺんに礼をしました。
 先生はすぐ前からの続きを講義しました。
「そこで、澱粉《でんぷん》と脂肪《しぼう》と蛋白質《たんぱくしつ》と、この成分の大事なことはよくおわかりになったでしょう。
 こんどはどんなたべものに、この三つの成分がどんな工合《ぐあい》に入っているか、それを云います。凡《およ》そ、食物の中で、滋養《じよう》に富みそしておいしく、また見掛けも大へん立派なものは鶏《にわとり》です。鶏は実際食物中の王と呼ばれる通りです。今鶏の肉の成分の分析表《ぶんせきひょう》をあげましょう。みなさん帳面へ書いて下さい。
 蛋白質は十八ポイント五パアセント、脂肪は九ポイント三パーセント、含水炭素《がんすいたんそ》は一ポイ
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