まるでちがっていますからな、ははん。あなたの方の狩猟は私の方の護身にはいり、私の方の狩猟は、さあ、狩猟前業はあなたの方の畜産《ちくさん》にでも入りますかな、まあとにかくその時々でゆっくりご説明いたしましょう。」
 この時ベルが又鳴りました。
 がやがや物を言う声、それから「気をつけ」や「番号」や「右向け右」や「前へ進め」で狐の生徒は一学級ずつだんだん教室に入ったらしいのです。
 それからしばらくたって、どの教室もしいんとなりました。先生たちの太い声が聞えて来ました。
「さあではご案内を致しましょう。」狐の校長さんは賢《かしこ》そうに口を尖《とが》らして笑いながら椅子《いす》から立ちあがりました。私はそれについて室《へや》を出ました。
「はじめに第一学年をご案内いたします。」
 校長さんは「第一教室、第一学年、担任者、武井甲吉」と黒い塗札《ぬりふだ》の下った、ばらの壁《かべ》で囲まれた室に入りました。私もついて入りました。そこの先生は私のまだあわない方で実にしゃれたなりをして頭の銀毛などもごく高尚《こうしょう》なドイツ刈《が》りに白のモオニングを着て教壇《きょうだん》に立っていました。も
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