なさったときはやしたそうだが、又私もここで聞いていたが、どうしてそんなことをしたか。」
「わかりません。」
「わからないだろう。全くわからないもんだ。わかったらまさかお前たちはそんなことしないだろうな。では今日の所は、私からよくお客さまにお詫《わび》を申しあげて置くから、これからよく気をつけなくちゃいけないよ。いいか。もう決して学校で禁じてあることをしてはならんぞ。」
「はい、わかりました。」
「では帰って遊んでよろしい。」校長さんは今度は私に向きました。担任の先生はきちんとまだ立っています。
「只今《ただいま》のようなわけで、至って無邪気《むじゃき》なので、決して悪気があって笑ったりしたのではないようでございますから、どうかおゆるしをねがいとう存じます。」
私はもちろんすぐ云いました。
「どう致《いた》しまして。私こそいきなりおうちの運動場へ飛び込《こ》んで来て、いろいろ失礼を致しました。生徒さん方に笑われるのなら却《かえ》って私は嬉《うれ》しい位です。」
校長さんは眼鏡《めがね》を拭《ふ》いてかけました。
「いや、ありがとうございます。おい武村君。君からもお礼を申しあげてくれ。
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