ぽ》を入れる袋もついてあります。仕立賃も廉《やす》くはないと私は思いました。そして大きな近眼鏡をかけその向うの眼はまるで黄金《きん》いろでした。じっと私を見つめました。それから急いで云いました。
「ようこそいらっしゃいました。さあさあ、どうぞお入り下さい。運動場で生徒が大へん失礼なことをしましたそうで。さあさあ、どうぞお入り下さい。どうぞお入り。」
 私は校長について、校長室へ入りました。その立派なこと。卓の上には地球儀《ちきゅうぎ》がおいてありましたしうしろのガラス戸棚《とだな》には鶏《にわとり》の骨格やそれからいろいろのわなの標本、剥製《はくせい》の狼《おおかみ》や、さまざまの鉄砲《てっぽう》の上手に泥《どろ》でこしらえた模型、猟師《りょうし》のかぶるみの帽子《ぼうし》、鳥打帽から何から何まですべて狐の初等教育に必要なくらいのものはみんな備えつけられていました。私は眼を円くして、ここでもきょろきょろするより仕方ありませんでした。そのうち校長はお茶を注《つ》いで私に出しました。見ると紅茶です。ミルクも入れてあるらしいのです。私はすっかり度胆《どぎも》をぬかれました。
「さあどうか、お
前へ 次へ
全29ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング