校の行進歌《こうしんか》の練習《れんしゅう》をした。僕らが歌って一年生がまねをするのだ。けれどもぼくは何だか圧《お》しつけられるようであの行進歌《こうしんか》はきらいだ。何だかあの歌を歌うと頭が痛《いた》くなるような気がする。実習《じっしゅう》のほうが却《かえ》っていいくらいだ。学校から纏《まと》めて注文《ちゅうもん》するというので僕《ぼく》は苹果《りんご》を二本と葡萄《ぶどう》を一本|頼《たの》んでおいた。
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四月九日〔以下空白〕
一千九百|廿《にじゅう》五年五月五日 晴
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まだ朝の風は冷《つめ》たいけれども学校へ上り口の公園の桜《さくら》は咲《さ》いた。けれどもぼくは桜の花はあんまり好《す》きでない。朝日にすかされたのを木の下から見ると何だか蛙《かえる》の卵《たまご》のような気がする。それにすぐ古くさい歌やなんか思い出すしまた歌など詠《よ》むのろのろしたような昔《むかし》の人を考えるからどうもいやだ。そんなことがなかったら僕《ぼく》はもっと好きだったかも知れない。誰《だれ》も桜が立派《りっぱ》だなんて云《い》わなかったら僕はきっ
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