ょう》な上級生《じょうきゅうせい》が居ないのだ。そこで何だか今まで頭をぶっつけた低《ひく》い天井裏《てんじょううら》が無《な》くなったような気もするけれどもまた支柱《しちゅう》をみんな取《と》ってしまった桜《さくら》の木のような気もする。今日の実習《じっしゅう》にはそれをやった。去年《きょねん》の九月古い競馬場《けいばじょう》のまわりから掘って来て植《う》えておいたのだ。今ごろ支柱を取るのはまだ早いだろうとみんな思った。なぜならこれからちょうど小さな根《ね》がでるころなのに西風はまだまだ吹《ふ》くから幹《みき》がてこになってそれを切るのだ。けれども菊池《きくち》先生はみんな除《と》らせた。花が咲《さ》くのに支柱があっては見っともないと云《い》うのだけれども桜が咲くにはまだ一月もその余《よ》もある。菊池先生は春になったのでただ面白《おもしろ》くてあれを取ったのだとおもう。
その古い縄《なわ》だの冬の間のごみだの運動場《うんどうじょう》の隅《すみ》へ集《あつ》めて燃《も》やした。そこでほかの実習の組の人たちは羨《うらや》ましがった。午前中その実習をして放課《ほうか》になった。教科書がまだ来
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