質問《しつもん》していいと云った。けれども誰《だれ》も黙《だま》っていて下を向《む》いているばかりだった。ききたいことは僕《ぼく》だってみんなだって沢山《たくさん》あるのだ。けれどもぼくらがほんとうにききたいことをきくと先生はきっと顔をおかしくするからだめなのだ。
なぜ修身がほんとうにわれわれのしなければならないと信《しん》ずることを教えるものなら、どんな質問でも出さしてはっきりそれをほんとうかうそか示《しめ》さないのだろう。
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一千九百廿五年十月廿五日
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今日は土性調査《どせいちょうさ》の実習《じっしゅう》だった。僕《ぼく》は第《だい》二|班《はん》の班長で図板《ずばん》をもった。あとは五人でハムマアだの検土杖《けんどじょう》だの試験紙《しけんし》だの塩化加里《えんかカリ》の瓶《びん》だの持《も》って学校を出るときの愉快《ゆかい》さは何とも云《い》われなかった。谷《たに》先生もほんとうに愉快そうだった。六班がみんな思い思いの計画で別々《べつべつ》のコースをとって調査にかかった。僕は郡《ぐん》で調《しら》べたのをちゃんと写《うつ》して予
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