に落ちました。
「ちかごろは噴火《ふんか》もありませんし、地震《じしん》もありませんし、どうも空は青い一方ですな。」
判事たちの中で一番位の高いまっ赤な、ばけものが云いました。
「そうだね全くそうだ。しかし昨日サンムトリが大分鳴ったそうじゃないか。」
「ええ新報に出て居りました。サンムトリというのはあれですか。」
二番目にえらい判事が向うの青く光る三角な山を指しました。
「うん。そうさ。僕《ぼく》の計算によると、どうしても近いうちに噴《ふ》き出さないといかんのだがな。何せ、サンムトリの底の瓦斯《ガス》の圧力が九十億気圧以上になってるんだ。それにサンムトリの一番弱い所は、八十億気圧にしか耐《た》えない筈《はず》なんだ。それに噴火をやらんというのはおかしいじゃないか。僕の計算にまちがいがあるとはどうもそう思えんね。」
「ええ。」
上席判事やみんなが一緒《いっしょ》にうなずきました。その時向うのサンムトリの青い光がぐらぐらっとゆれました。それからよこの方へ少しまがったように見えましたが、忽《たちま》ち山が水瓜《すいか》を割ったようにまっ二つに開き、黄色や褐色《かっしょく》の煙《けむり》
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