黒いばけものがみな真似《まね》をして投げました。バラバラバラバラ真珠の雨は見物の頭に落ちて来ました。
 女の子は笑って何かかすかに呪《まじな》いのような歌をやりながらみんなを指図しています。
 ペンネンネンネンネン・ネネムはその女の子の顔をじっと見ました。たしかにたしかにそれこそは妹のペンネンネンネンネン・マミミだったのです。ネネムはとうとう堪《こら》え兼ねて高く叫びました。
「マミミ。マミミ。おれだよ。ネネムだよ。」
 女の子はぎょっとしたようにネネムの方を見ました。それから何か叫んだようでしたが声がかすれてこっちまで届きませんでした。ネネムは又叫びました。
「おれだ。ネネムだ。」
 マミミはまるで頭から足から火がついたようにはねあがって舞台から飛び下りようとしましたら、黒い助手のばけものどもが麦をなげるのをやめてばらばら走って来てしっかりと押《おさ》えました。
「マミミ。おれだ。ネネムだよ。」ネネムは舞台へはねあがりました。
 幕のうしろからさっきのテジマアが黄色なゆるいガウンのようなものを着ていかにも落ち着いて出て参りました。
「さわがしいな。どうしたんだ。はてな。このお方はどう
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