る間に立派な茶色の穂《ほ》を出し小さな白い花をつけました。舞台は燃えるように赤く光りました。
[#ここから1字下げ]
「おキレの角はケンケンケン
ばけもの麦はザランザララ
とんびトーロロトーロロトー、
鎌《かま》のひかりは シンシンシン。」
[#ここで字下げ終わり]
とみんなは足踏《あしぶ》みをして歌いました。たちまち穂は立派な実になって頭をずうっと垂れました。黒いきもののばけものどもはいつの間にか大きな鎌を持っていてそれをサクサク刈《か》りはじめました。歌いながら踊《おど》りながら刈りました。見る見る麦の束《たば》は山のように舞台のまん中に積みあげられました。
[#ここから1字下げ]
「おキレの角はクンクンクン
ばけもの麦はザック、ザック、ザ、
からすカーララ、カーララ、カー、
唐箕《とうみ》のうなりはフウララフウ。」
[#ここで字下げ終わり]
みんなはいつの間にか棒を持っていました。そして麦束はポンポン叩かれたと思うと、もうみんな粒《つぶ》が落ちていました。麦稈《むぎから》[#「麦稈《むぎから》」に傍線]は青いほのおをあげてめらめらと燃え、あとには黄色な麦粒の小山が残
前へ
次へ
全61ページ中48ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング