ね。」と云いながら、テジマアはそのわかばけものの手を取って、五六ぺんぶらぶら振《ふ》りました。
「テジマア、テジマア!」
「うまいぞ、テジマア!」みんなはどっとはやしました。
舞台《ぶたい》の上の二人は、手を握ったまま、ふいっとおじぎをして、それから、
「バラコック、バララゲ、ボラン、ボラン、ボラン」と変な歌を高く歌いながら、幕の中に引っ込んで行きました。
ボロン、ボロン、ボロロンと、どらが又鳴りました。
舞台が月光のようにさっと青くなりました。それからだんだんのんびりしたいかにも春らしい桃色に変りました。
まっ黒な着物を着たばけものが右左から十人ばかり大きなシャベルを持ったりきらきらするフォークをかついだりして出て来て
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「おキレの角《つの》はカンカンカン
ばけもの麦はベランべランベラン
ひばり、チッチクチッチクチー
フォークのひかりはサンサンサン。」
[#ここで字下げ終わり]
とばけもの世界の農業の歌を歌いながら畑を耕したり種子を蒔《ま》いたりするようなまねをはじめました。たちまち床からベランベランベランと大きな緑色のばけもの麦の木が生え出して見
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