つづけてまばたきをして、とうとうたまらなくなったと見えて、両手で眼を覆《おお》いました。皿の上のテジマアは落ちついてにゅうと顔を差し出しました。若ばけものは、がたりと椅子から落ちました。テジマアはすっくりと皿の上に立ちあがって、それからひらりと皿をはね下りて、自分が椅子にどっかり座りそれから床の上に倒れている若ばけものを、雑作もなく皿の上につまみ上げました。
その時給仕が、たしかに金《かね》でできたらしいナイフを持って来て、テーブルの上に置きました。テジマアは一寸《ちょっと》うなずいて、ポッケットから財布《さいふ》を出し、半紙判の紙幣《しへい》を一枚引っぱり出して給仕にそれを握《にぎ》らせました。
「今度の旦那《だんな》は気前が実にいいなあ。」とつぶやきながら、ばけもの給仕は幕の中にはいって行きました。そこでテジマアは、ナイフをとり上げて皿の上のばけものを、もにゃもにゃもにゃっと切って、ホークに刺《さ》して、むにゃむにゃむにゃっと喰《く》ってしまいました。
その時「バア」と声がして、その食われた筈の若ばけものが、床の下から躍《おど》りだしました。
「君よくたっしゃで居て呉《く》れた
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