して、テーブルに座《すわ》りました。白い前掛をつけたばけものの給仕が、さしわたし四尺ばかりあるまっ白の皿《さら》を、恭々しく持って来て卓子の上に置きました。
「フォーク!」と椅子にかけた若ばけものがテーブルを叩《たた》きつけてどなりました。
「へい。これはとんだ無調法を致しました。ただ今、すぐ持って参ります。」と云いながら、その給仕は二尺ばかりあるホークを持って参りました。
「ナイフ!」と又若ばけものはテーブルを叩いてどなりました。
「へい。これはとんだ無調法を致しました。ただ今、すぐ持って参ります。」と云いながらその給仕は、幕のうしろにはいって行って、長さ二尺ばかりあるナイフを持って参りました。ところがそのナイフをテーブルの上に置きますと、すぐ刃がくにゃんとまがってしまいました。
「だめだ、こんなもの。」とその椅子にかけたばけものは、ナイフを床に投げつけました。
 ナイフはひらひらと床に落ちて、パッと赤い火に燃えあがって消えてしまいました。
「へい。これは無調法致しました。ただ今のはナイフの広告でございました。本物のいいのを持って参ります。」と云いながら給仕は引っ込《こ》んで行きまし
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