顔を物凄《ものすご》く照らし、見物のものはみんなはらはらしていました。
「仲々|勇壮《ゆうそう》だね。」とネネムは云いました。
そのうちにとうとう、一人はバアと音がして肩《かた》から胸から腰《こし》へかけてすっぽりと斬《き》られて、からだがまっ二つに分れ、バランチャンと床《ゆか》に倒《たお》れてしまいました。
斬った方は肩を怒《いか》らせて、三べん刀を高くふり廻《まわ》し、紫色《むらさきいろ》の烈《はげ》しい火花を揚《あ》げて、楽屋へはいって行きました。
すると倒れた方のまっ二つになったからだがバタッと又一つになって、見る見る傷口がすっかりくっつき、ゲラゲラゲラッと笑って起きあがりました。そして頭をほんのすこし下げてお辞儀をして、
「まだ傷口がよくくっつきませんから、粗末《そまつ》なおじぎでごめんなさい。」と云いながら、又ゲラゲラゲラッと笑って、これも楽屋へはいって行きました。
ボロン、ボロン、ボロロン、とどらが鳴りました。一つの白いきれを掛《か》けた卓子《テーブル》と、椅子《いす》とが持ち出されました。眼のまわりをまっ黒に塗《ぬ》った若いばけものが、わざと少し口を尖《とが》ら
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