んどは犬の形、ええ今度は兎《うさぎ》の形などと、ばけものをしんこ細工のように延ばしたり円めたり、耳を附《つ》けたり又とったり致《いた》すのをよく見受けます。」
「そうか。そして、そんなやつらは一体世界中に何人位あるのかな。」
「左様。一昨年の調べでは、奇術を職業にしますものは、五十九人となって居《お》りますが、只今《ただいま》は大分減ったかと存ぜられます。」
「そうか。どうもそんなしんこ細工のようなことをするというのは、この世界がまだなめくじでできていたころの遺風だ。一寸視察に出よう。事によると禁止をしなければなるまい。」
そこでネネムは、部下の検事を随《したが》えて、今日もまちへ出ました。そして検事の案内で、まっすぐに奇術大一座のある処に参りました。奇術は今や丁度まっ最中です。
ネネムは、検事と一緒《いっしょ》に中へはいりました。楽隊が盛《さか》んにやっています。ギラギラする鋼《はがね》の小手だけつけた青と白との二人のばけものが、電気|決闘《けっとう》というものをやっているのでした。剣《けん》がカチャンカチャンと云うたびに、青い火花が、まるで箒《ほうき》のように剣から出て、二人の
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