ろぞろ持って行くのでした。さてネネムは、この様な大へんな名誉《めいよ》を得て、そのほかに、みなさんももうご存知でしょうが、フゥフィーボー博士のほかに、誰《たれ》も決して喰べてならない藁のオムレツまで、ネネムは喰べることを許されていました。それですから、誰が考えてもこんな幸福なことがない筈《はず》だったのですが、実はネネムは一向面白くありませんでした。それというのは、あのネネムが八つの飢饉《ききん》の年、お菓子の籠《かご》に入れられて、「おおホイホイ、おおホイホイ。」と云いながらさらって行かれたネネムの妹のマミミのことが、一寸も頭から離れなかった為《ため》です。
 そこでネネムは、ある日、テーブルの上の鈴《リン》をチチンと鳴らして、部下の検事を一人、呼びました。
「一寸君にたずねたいことがあるのだが。」
「何でございますか。」
「膝《ひざ》やかかとの骨の、まだ堅《かた》まらない小さな女の子をつかう商売は、一体どんな商売だろう。」
 検事はしばらく考えてから答えました。
「それはばけもの奇術《きじゅつ》でございましょう。ばけもの奇術師が、よく十二三位までの女の子を、変身術だと申して、ええこ
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