五歳。アツレキ三十一年七月一日夜、表、アフリカ、コンゴオの林中の空地に於て故なくして擅《ほしいまま》に出現、舞踏《ぶとう》中の土地人を恐怖《きょうふ》散乱せしめたる件。」
「よろしい、わかった。」とネネムは云いました。
「姓名年齢その通りに相違ないか。」
「へい。その通りです。」
「その方はアツレキ三十一年七月一日夜、アフリカ、コンゴオの林中空地に於て、故なくして擅に出現、折柄《おりから》月明によって歌舞、歓をなせる所の一群を恐怖散乱せしめたことは、しかとその通りにちがいないか。」
「全くその通りです。」
「よろしい。何の目的で出現したのだ。既《すで》に法律上故なく擅となってあるが、その方の意中を今一応|尋《たず》ねよう。」
「へい。その実は、あまり面白《おもしろ》かったもんですから。へい。どうも相済みません。あまり面白かったんで。ケロ、ケロ、ケロ、ケロロ、ケロ、ケロ。」
「控《ひか》えろ。」
「へい。全くどうも相済みません。恐《おそ》れ入りました。」
「うん。お前は、最《もっとも》明らかな出現罪である。依って明日より二十二日間、ムッセン街道の見まわりを命ずる。今後ばけものの世界長の許
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