考えていましたが、急に起きあがって、
「おれは森へ行って何かさがして来るぞ。」と云《い》いながら、よろよろ家を出て行きましたが、それなりもういつまで待っても帰って来ませんでした。たしかにばけもの世界の天国に、行ってしまったのでした。
ネネムのお母さんは、毎日目を光らせて、ため息ばかり吐《つ》いていましたが、ある日ネネムとマミミとに、
「わたしは野原に行って何かさがして来るからね。」と云って、よろよろ家を出て行きましたが、やはりそれきりいつまで待っても帰って参りませんでした。たしかにお母さんもその天国に呼ばれて行ってしまったのでした。
ネネムは小さなマミミとただ二人、寒さと飢《う》えとにガタガタふるえて居《お》りました。
するとある日戸口から、
「いや、今日は。私はこの地方の飢饉を救《たす》けに来たものですがね、さあ何でも喰《た》べなさい。」と云いながら、一人の目の鋭《するど》いせいの高い男が、大きな籠《かご》の中に、ワップルや葡萄《ぶどう》パンや、そのほかうまいものを沢山《たくさん》入れて入って来たのでした。
二人はまるで籠を引ったくるようにして、ムシャムシャムシャムシャ、沢山
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