フランドン農学校の豚
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)摂取《せっしゅ》して

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)毎日|阿麻仁《あまに》を
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〔冒頭原稿一枚?なし〕
以外の物質は、みなすべて、よくこれを摂取《せっしゅ》して、脂肪《しぼう》若《もし》くは蛋白質《たんぱくしつ》となし、その体内に蓄積《ちくせき》す。」とこう書いてあったから、農学校の畜産《ちくさん》の、助手や又《また》小使などは金石でないものならばどんなものでも片《かた》っ端《ぱし》から、持って来てほうり出したのだ。
 尤《もっと》もこれは豚の方では、それが生れつきなのだし、充分《じゅうぶん》によくなれていたから、けしていやだとも思わなかった。却《かえ》ってある夕方などは、殊《こと》に豚は自分の幸福を、感じて、天上に向いて感謝していた。というわけはその晩方、化学を習った一年生の、生徒が、自分の前に来ていかにも不思議そうにして、豚のからだを眺《なが》めて居た。豚の方でも時々は、あの小さなそら豆形《まめがた》の怒《おこ》ったような眼《め》をあげて、そちらをちらちら見て
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