しめし》のいよいよ大きく深いことを知りました。はじめ私は混食のキリスト信者としてこの式場に臨《のぞ》んだのでありましたが今や神は私に敬虔《けいけん》なるビジテリアンの信者たることを命じたまいました。ねがわくは先輩諸氏|愚昧《ぐまい》小生の如《ごと》きをも清き諸氏の集会の中に諸氏の同朋《どうぼう》として許したまえ。」
 そして壇を下って頭を垂れて立ちました。
 祭司次長がすぐ進んで握手《あくしゅ》しました。みんなは歓呼の声をあげ熱心に拍手してこの新らしい信者を迎《むか》えたのです。
 すると異教席はもうめちゃめちゃでした。まっ黒になって一ぺんに立ちあがり一ぺんに壇にのぼって
「悔《く》い改めます。許して下さい。私どももみんなビジテリアンになります。」と声をそろえて云ったのです。
 祭司次長がすぐ進んで一人ずつ握手《あくしゅ》しました。そして一人ずつ壇を下ってこっちの椅子に座《すわ》りました。歓呼と拍手とで一杯《いっぱい》でした。椅子が丁度うまい工合《ぐあい》にあったのです。何だかあんまりみんなうまい工合でした。そのとき外ではどうんと又一発陳氏ののろしがあがりました。その陳氏がもう入って来
前へ 次へ
全76ページ中73ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング