さんご》類のように植物に似たやつもあれば植物の中にだって食虫植物もある、睡眠《すいみん》を摂《と》る植物もある、睡《ねむ》る植物などは毎晩|邪魔《じゃま》して睡らせないと枯《か》れてしまう、食虫植物には小鳥を捕《と》るのもあり人間を殺すやつさえあるぞ。殊《こと》にバクテリアなどは先頃《せんころ》まで度々《たびたび》分類学者が動物の中へ入れたんだ。今はまあ植物の中へ入れてあるがそれはほんのはずみなのだ。そんな曖昧《あいまい》な動物かも知れないものは勿論|仁慈《じんじ》に富めるビジテリアン諸氏は食べたり殺したりしないだろう。ところがどうだ諸君諸君が一寸《ちょっと》菜っ葉へ酢《す》をかけてたべる、そのとき諸君の胃袋《いぶくろ》に入って死んでしまうバクテリアの数は百億や二百億じゃ利《き》けゃしない。諸君が一寸|葡萄《ぶどう》をたべるその一|房《ふさ》にいくらの細菌や酵母《こうぼ》がついているか、もっと早いとこ諸君が町の空気を吸う一回に多いときなら一万ぐらいの細菌が殺される。そんな工合《ぐあい》で毎日生きていながら私はビジテリアンですから牛肉はたべません、なんて、牛肉はいくら喰べたって一つの命の
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