小さなことまで、一一|吟味《ぎんみ》して大へんな手数をしたり、ほかの人にまで迷惑《めいわく》をかけたり、そんなにまでしなくてもいい、もしたくさんのいのちの為《ため》に、どうしても一つのいのちが入用なときは、仕方ないから泣きながらでも食べていい、そのかわりもしその一人が自分になった場合でも敢《あえ》て避《さ》けないとこう云うのです。けれどもそんな非常の場合は、実に実に少いから、ふだんはもちろん、なるべく植物をとり、動物を殺さないようにしなければならない、くれぐれも自分一人気持ちをさっぱりすることにばかりかかわって、大切の精神を忘れてはいけないと斯《こ》う云うのであります。
そこで、大体ビジテリアンというものの性質はおわかりでしょうから、これから昨年のその大祭のときのもようをお話いたします。
私がニュウファウンドランドの、トリニテイの港に着きましたのは、恰度《ちょうど》大祭の前々日でありました。事によると、間に合わないと思ったのが、うまい工合《ぐあい》に参りましたので、大へんよろこびました。トルコからの六人の人たちと、船の中で知り合いになりました。その団長は、地学博士でした。大祭に参加
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