後、すぐ六人ともカナダの北境を探険するという話でした。私たちは、船を下りると、すぐ旅装《りょそう》を調えて、ヒルテイの村に出発したのであります。実は私は日本から出ました際には、ニュウファウンドランドへさえ着いたら、誰《たれ》の眼《め》もみなそのヒルテイという村の方へ向いてるだろう、世界中から集った旅人が、ぞろぞろそっちへ行くのだろうから、もうすぐ路《みち》なんかわかるだろうと思って居《お》りました。ところが、船の中でこそ、遇然《ぐうぜん》トルコ人六人とも知り合いになったようなもの、実際トリニテイの町に下りて見ると、どこにもそんなビラが張ってあるでもなし、ヒルテイという名を云う人も一人だってあるでなし、実は私も少し意外に感じたので〔以下原稿数枚なし〕

は町をはなれて、海岸の白い崖《がけ》の上の小さなみちを行きました、そらが曇《くも》って居りましたので大西洋がうすくさびたブリキのように見え、秋風は白いなみがしらを起し、小さな漁船はたくさんならんで、その中を行くのでした。落葉松《からまつ》の下枝《したえだ》は、もう褐色《かっしょく》に変っていたのです。
 トルコ人たちは、みちに出ている岩に
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