い柳のけむりが垂れ、その間を燕の形の黒いものが、ぐるぐる縫《ぬ》って進みました。
「さあ式場へ参りましょう。お前たち此処《ここ》で番をしておいで。」陳氏は英語で云って、それから私らは、その二人の子供らの敬礼をうしろに式場の天幕《テント》へ帰りました。
 もう式の始まるに、六分しかありませんでした。天幕の入口で、私たちはプログラムを受け取りました。それには表に
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 ビジテリアン大祭次第
挙祭挨拶
論難|反駁《はんぱく》
祭歌合唱
祈祷《きとう》
閉式挨拶
会食
会員紹介
余興    以上
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と刷ってあり私たちがそれを受け取った時丁度九時五分前でした。
 式場の中はぎっしりでした。それに人数もよく調べてあったと見えて、空いた椅子《いす》とてもあんまりなく、勿論《もちろん》腰《こし》かけないで立っている人などは一人もありませんでした。みんなで五百人はあったでしょう。その中には婦人たちも三分の一はあったでしょう。いろいろな服装や色彩《しきさい》が、処々《ところどころ》に配置された橙や青の盛花《もりばな》と入りまじり、秋の空気はすきとおって水のよう、
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