信者たちも又《また》さっきとは打って変って、しいんとして式の始まるのを待っていました。
 アーチになった祭壇のすぐ下には、スナイダーを楽長とするオーケストラバンドが、半円陣《はんえんじん》を採り、その左には唱歌隊の席がありました。唱歌隊の中にはカナダのグロッコも居たそうですが、どの人かわかりませんでした。
 ところが祭壇の下オーケストラバンドの右側に、「異教徒席」「異派席」という二つの陶製の標札《ひょうさつ》が出て、どちらにも二十人ばかりの礼装をした人たちが座って居りました。中には今朝の自働車で見たような人も大分ありました。
 私もそこで陳氏と並んで一番うしろに席をとりました。陳氏はしきりに向うの異教徒席や異派席とプログラムとを比較《ひかく》しながらよほど気にかかる模様でした。とうとう、そっと私にささやきました。
「このプログラムの論難というのは向うのあの連中がやるのですね。」
「きっとそうでしょうね。」
「どうです、異派席の連中は、私たちの仲間にくらべては少し風采《ふうさい》でも何でも見劣《みおと》りするようですね。」
 私も笑いました。
「どうもそうのようですよ。」
 陳氏が又云い
前へ 次へ
全76ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング