人も連れて来ているのでした。そして三人とも、今日はすっかり支那服でした。私は支那服の立派さを、この朝ぐらい感じたことはありません。陳氏はすっかり黒の支度《したく》をして、袖口《そでぐち》と沓《くつ》だけ、まばゆいくらいまっ白に、髪は昨日《きのう》の通りでしたが、支那の勲章を一つつけていました。
 それから助手の子供らは、まるで絵にある唐児《からこ》です。あたまをまん中だけ残して、くりくり剃《そ》って、恭《うやうや》しく両手を拱《こまね》いて、陳氏のうしろに立っていました。陳氏は私の行ったのを見ると本当に嬉《うれ》しかったと見えて、いきなり手を出して、
「おめでとう。お早う。いいお天気です。天の幸、君にあらんことを。」とつづけざまにべらべら挨拶しました。
「お早う。」私たちは手を握《にぎ》りました。二人の子供の助手も、両手を拱いたまま私に一揖《いちゆう》しました。私も全く嬉しかったんです。ニュウファウンドランド島の青ぞらの下で、この叮重《ていちょう》な東洋風の礼を受けたのです。
 陳氏は云いました。
「さあ、もう一発やりますよ。あとは式がすんでからです。今度のは、私の郷国の名前では、柳雲
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