あんまり意地が悪かったのであります。
ところが、又もやのろしが教会の方であがりました。まっ青なそらで、白いけむりがパッと開き、それからトントンと音が聞えました。けむりの中から出て来たのは、今度こそ全く支那《しな》風の五色の蓮華《れんげ》の花でした。なるほどやっぱり陳氏だ、お経《きょう》にある青色青光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光をやったんだなと、私はつくづく感心してそれを見上げました。全くその蓮華のはなびらは、ニュウファウンドランド島、ヒルテイ村ビジテリアン大祭の、新鮮な朝のそらを、かすかに光って舞《ま》い降りて来るのでした。
それから教会の方で、賑《にぎ》やかなバンドが始まりました。それが風下でしたから、手にとるように聞えました。それがいかにも本式なのです。私たちは、はじめはこれはよほど費用をかけて大陸から頼《たの》んで来たんだなと思いましたが、あとで聞きましたら、あの有名なスナイダーが私たちの仲間だったんです。スナイダーは、自分のバンド(尤《もっと》もその半数は、みんなビジテリアンだったのです、)を、そっくりつれてやはり一昨日《おととい》、ここへ着いたのだそうです。とにかく、式
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