云ったんですか。」「馬がそう云ったそうですよ。わっしゃ馬から聞きやした。(おい、情《なさ》けないこと云うじゃないか、おいらはひどく餓《う》えてんだ。ちっとオートでも振《ふ》る舞《ま》えよ。)ところがタスケの馬も馬でさあ、面白《おもしろ》がってオペラのようにふしをつけて(なかなかやれないわたしのオート。)だなんてやったもんです。バキチもそこはのんきです。やっぱりふしをつけながら、(お呉《く》れよ、お呉れよ、お前のオートわたしにお呉れよ。)とうなっていました。そこへ丁度《ちょうど》わたしが通りかかりました。おい、おい、バキチ、あんまりみっともないざまはよせよ。一体馬を盗《ぬす》もうってのか。
それとも宿《やど》がなくなって今夜|一晩《ひとばん》とめてもらいたいと云《い》うのか。バキチが頭を掻《か》きやした。いやどっちもだ、けれども馬を盗むよりとまるよりまず第一《だいいち》に、おれは何かが食いたいんだ。(以下原稿空白)
底本:「ポラーノの広場」角川文庫、角川書店
1996(平成8)年6月25日初版発行
底本の親本:「新校本 宮澤賢治全集」筑摩書房
1995(平成7)年5月
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