ってそいつを持《も》って警察《けいさつ》の小使室《こづかいしつ》へ帰るんです。」「変《へん》だねえ、なるほどねえ。」「何でも五回か六回かそんなことがあったそうです。そしたらある日|署長《しょちょう》のとこへ差出人《さしだしにん》の名の書いてない変な手紙が行ったんです。署長が見たら今のことでしょう、けれども署長《しょちょう》は笑《わら》ってました。なぜって巡査《じゅんさ》なんてものは実際《じっさい》月給《げっきゅう》も僅《わず》かですしね、くらしに困《こま》るものなんです。」「なるほどねえ、そりゃそうだねえ。」
「ところがねえ、次《つぎ》が大へんなんですよ、耕牧舎《こうぼくしゃ》の飼牛《かいうし》がね、結核《けっかく》にかかっていたんですがある日とうとう死《し》んだんです。ところが病気《びょうき》のけだものは死んだら棄《す》てなくちゃいけないでしょう。けれども何せ売れば二、三百にはなるんです。誰《だれ》だって惜《お》しいとは思います。耕牧舎でもこっそりそれを売っているらしいというんです。行って見て来いってうわけでバキチが剣《けん》をがちゃつかせ、耕牧舎へやって来たでしょう。耕牧舎でもじっ
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