思ったんだが、かえっていけなくしてしまった。ほんとにきのどくなことになったよ。しかしわたしには、また考《かんが》えがあるから、そんなに心配《しんぱい》しないでもいいよ。お前たちは霧《きり》でお互《たが》いに顔も見えずさびしいだろう」
「ええ」
「ええ」
「そうか、ではおれが見えるようにしてやろう。いいか、おれのあとについて二人いっしょにまねをするんだぜ」
「ええ」
「そうか。ではアルファー」
「アルファー」
「ビーター」「ビーター」
「ガムマー」「ガムマーアー」
「デルター」「デールータァーアアア」
 実《じつ》に不思議《ふしぎ》です。いつかシグナルとシグナレスとの二人は、まっ黒な夜の中に肩《かた》をならべて立っていました。
「おや、どうしたんだろう。あたり一面《いちめん》まっ黒びろうどの夜だ」
「まあ、不思議《ふしぎ》ですわね。まっくらだわ」
「いいや、頭の上が星でいっぱいです。おや、なんという大きな強い星なんだろう。それに見たこともない空の模様《もよう》ではありませんか、いったいあの十三|連《れん》なる青い星はどこにあったのでしょう、こんな星は見たことも聞いたこともありませんね、僕
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