》はほうほう 汗《あせ》が出る。
もう七、八|里《り》 はせたいな、
今日も一日 霜ぐもり。
ガタンガタン、ギー、シュウシュウ」
[#ここで字下げ終わり]
軽便鉄道《けいべんてつどう》の東からの一番|列車《れっしゃ》が少しあわてたように、こう歌いながらやって来てとまりました。機関車《きかんしゃ》の下からは、力のない湯《ゆ》げが逃《に》げ出して行き、ほそ長いおかしな形の煙突《えんとつ》からは青いけむりが、ほんの少うし立ちました。
そこで軽便鉄道づきの電信柱《でんしんばしら》どもは、やっと安心《あんしん》したように、ぶんぶんとうなり、シグナルの柱はかたんと白い腕木《うでき》を上げました。このまっすぐなシグナルの柱は、シグナレスでした。
シグナレスはほっと小さなため息《いき》をついて空を見上げました。空にはうすい雲が縞《しま》になっていっぱいに充《み》ち、それはつめたい白光《しろびかり》を凍《こお》った地面《じめん》に降《ふ》らせながら、しずかに東に流《なが》れていたのです。
シグナレスはじっとその雲の行《ゆ》く方《え》をながめました。それからやさしい腕木を思い切りそっち
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