ら、ぞろぞろ店の中へはいって行きました。すると店にはうすぐろいとのさまがえるが、のっそりとすわって退くつそうにひとりでべろべろ舌を出して遊んでいましたが、みんなの来たのを見て途方もないいい声で云《い》いました。
「へい、いらっしゃい。みなさん。一寸《ちょっと》おやすみなさい。」
「なんですか。舶来のウェクーというものがあるそうですね。どんなもんですか。ためしに一杯|呑《の》ませて下さいませんか。」
「へい、舶来のウェスキイですか。一杯二厘半ですよ。ようござんすか。」
「ええ、よござんす。」
 とのさまがえるは粟《あわ》つぶをくり抜《ぬ》いたコップにその強いお酒を汲《く》んで出しました。
「ウーイ。これはどうもひどいもんだ。腹がやけるようだ。ウーイ。おい、みんな、これはきたいなもんだよ。咽喉《のど》へはいると急に熱くなるんだ。ああ、いい気分だ。もう一杯下さいませんか。」
「はいはい。こちらが一ぺんすんでからさしあげます。」
「こっちへも早く下さい。」
「はいはい。お声の順にさしあげます。さあ、これはあなた。」
「いやありがとう、ウーイ。ウフッ、ウウ、どうもうまいもんだ。」
「こっちへも早
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