歌ったり笑ったり叫《さけ》んだりして仕事をしました。殊《こと》にあらしの次の日などは、あっちからもこっちからもどうか早く来てお庭をかくしてしまった板を起して下さいとか、うちのすぎごけの木が倒《たお》れましたから大いそぎで五六人来てみて下さいとか、それはそれはいそがしいのでした。いそがしければいそがしいほど、みんなは自分たちが立派な人になったような気がして、もう大よろこびでした。さあ、それ、しっかりひっぱれ、いいか、よいとこしょ、おい、ブチュコ、縄《なわ》がたるむよ、いいとも、そらひっぱれ、おい、おい、ビキコ、そこをはなせ、縄を結んで呉《く》れ、よういやさ、そらもう一いき、よおいやしゃ、なんてまあこんな工合《ぐあい》です。
ところがある日三十疋のあまがえるが、蟻《あり》の公園地をすっかり仕上げて、みんなよろこんで一まず本部へ引きあげる途中《とちゅう》で、一本の桃《もも》の木の下を通りますと、そこへ新らしい店が一|軒《けん》出ていました。そして看板がかかって、
「舶来《はくらい》ウェスキイ 一|杯《ぱい》、二|厘《りん》半。」と書いてありました。
あまがえるは珍《めず》らしいものですか
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