りながら、花畑の方へ参りました。ところが丁度|幸《さいわい》に花のたねは雨のようにこぼれていましたし蜂《はち》もぶんぶん鳴いていましたのであまがえるはみんなしゃがんで一生けん命ひろいました。ひろいながらこんなことを云っていました。
「おい、ビチュコ。一万つぶひろえそうかい。」
「いそがないとだめそうだよ、まだ三百つぶにしかならないんだもの。」
「さっき団長が百粒ってはじめに云ったねい。百つぶならよかったねい。」
「うん。その次に千つぶって云ったねい。千つぶでもよかったねい。」
「ほんとうにねい。おいら、お酒をなぜあんなにのんだろうなあ。」
「おいらもそいつを考えているんだよ。どうも一ぱい目と二杯目、二杯目と三杯目、みんな順ぐりに糸か何かついていたよ。三百五十杯つながって居たとおいら今考えてるんだ。」
「全くだよ。おっと、急がないと大へんだ。」
「そうそう。」
 さて、みんなはひろってひろってひろって、夕方までにやっと一万つぶずつあつめて、カイロ団長のところへ帰って来ました。
 するととのさまがえるのカイロ団長はよろこんで、
「うん。よし。さあ、みんな舶来ウェスキーを一杯ずつのんで寝《ね
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