イギリス海岸
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)処《ところ》が

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)中央|分水嶺《ぶんすゐれい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「土+盧」、第3水準1−15−68]
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 夏休みの十五日の農場実習の間に、私どもがイギリス海岸とあだ名をつけて、二日か三日ごと、仕事が一きりつくたびに、よく遊びに行った処《ところ》がありました。
 それは本たうは海岸ではなくて、いかにも海岸の風をした川の岸です。北上《きたかみ》川の西岸でした。東の仙人《せんにん》峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截《よこぎ》って来る冷たい猿《さる》ヶ石《いし》川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。
 イギリス海岸には、青白い凝灰質の泥岩が、川に沿ってずゐぶん広く露出し、その南のはじに立ちますと、北のはづれに居る人は、小指の先よりもっと小さく見えました。
 殊にその泥岩層は、川の水の増すたんび、奇麗に洗は
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