鳴っている、そこらいちめん鳴っている太陽マジックの歌をごらんなさい。
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(※[#ト音記号、51−1]‥‥‥
 ※[#ト音記号、51−2]‥‥‥
 コロナは八十三万五百
 ※[#ト音記号、51−4]‥‥‥
 ※[#ト音記号、51−5]‥‥‥                    )
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 まぶしい山の雪の反射《はんしゃ》です。わたくしがはたらきながら、また重《おも》いものをはこびながら、手で水をすくうことも考えることのできないときは、そこから白びかりが氷《こおり》のようにわたくしの咽喉《のど》に寄《よ》せてきて、こくっとわたくしの咽喉《のど》を鳴らし、すっかりなおしてしまうのです。それにいまならぼくたちの膝《ひざ》はまるで上等《じょうとう》のばねのようです。去年《きょねん》の秋のようにあんなつめたい風のなかなら仕事《しごと》もずいぶんひどかったのですけれども、いまならあんまり楽でただ少し肩《かた》の重苦《おもくる》しいのをこらえるだけです。それだって却《かえ》って胸《むね》があつくなっていい気持《きもち》なくらいです。
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(コロナは六十三万十五
 ※[#ト音記号、52−2]‥‥‥
 ※[#ト音記号、52−3]‥‥‥                    )
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 おおこまどり、鳴いて行く鳴いて行く、音譜《おんぷ》のように飛《と》んで行きます。赤い上着《うわぎ》でどこまで今日はかけて行くの。いいねえ、ほんとうに、
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かえれ、こまどり、アカシヤづくり。
赤の上着《うわぎ》に野やまを越《こ》えて
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(※[#ト音記号、52−8]‥‥‥
 ※[#ト音記号、52−9]‥‥‥
 コロナは三十七万二千
 ※[#ト音記号、52−11]‥‥‥                    )
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 そこの角から赤髪《あかげ》の子供《こども》がひとり、こっちをのぞいてわらっています。おい、大将《たいしょう》、証書《しょうしょ》はちゃんとしまったかい。筆記帳《ひっきちょう》には組と名前を楷書《かいしょ》で書いてしまったの。
 さあ、春だ、うたったり走ったり、とびあがったりするがいい。風野又三郎《かぜのまたさぶろう》だって、もうガラスのマントをひらひ
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