立っているのでした。
(ああさっきから歌っていたのはあの子供らだ。けれどもあれはどうもただの子供らではないぞ。)諒安《りょうあん》はよくそっちを見ました。
 その子供らは羅《うすもの》をつけ瓔珞《ようらく》をかざり日光に光り、すべて断食《だんじき》のあけがたの夢《ゆめ》のようでした。ところがさっきの歌はその子供らでもないようでした。それは一人の子供がさっきよりずうっと細い声でマグノリアの木の梢《こずえ》を見あげながら歌い出したからです。
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「サンタ、マグノリア、
 枝《えだ》にいっぱいひかるはなんぞ。」
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 向《むこ》う側《がわ》の子が答えました。
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「天に飛《と》びたつ銀《ぎん》の鳩《はと》。」
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 こちらの子がまたうたいました。
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「セント、マグノリア、
 枝にいっぱいひかるはなんぞ。」
「天からおりた天の鳩。」
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 諒安はしずかに進《すす》んで行きました。
「マグノリアの木は寂静印《じゃくじょういん》です。ここはどこですか。」
「私たちにはわか
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