マリヴロンと少女
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)枯《か》れて
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城あとのおおばこの実は結び、赤つめ草の花は枯《か》れて焦茶色《こげちゃいろ》になって、畑の粟《あわ》は刈《か》りとられ、畑のすみから一寸《ちょっと》顔を出した野鼠《のねずみ》はびっくりしたように又《また》急いで穴の中へひっこむ。
崖《がけ》やほりには、まばゆい銀のすすきの穂《ほ》が、いちめん風に波立っている。
その城あとのまん中の、小さな四《し》っ角《かく》山の上に、めくらぶどうのやぶがあってその実がすっかり熟している。
ひとりの少女が楽譜《がくふ》をもってためいきしながら藪《やぶ》のそばの草にすわる。
かすかなかすかな日照り雨が降って、草はきらきら光り、向うの山は暗くなる。
そのありなしの日照りの雨が霽《は》れたので、草はあらたにきらきら光り、向うの山は明るくなって、少女はまぶしくおもてを伏《ふ》せる。
そっちの方から、もずが、まるで音譜をばらばらにしてふりまいたように飛んで来て、みんな一度に、銀のすすきの穂にとまる。
めくらぶどうの藪からはきれいな雫《し
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