ふりました。
「それは誤解です、誤解です。あの子どもは、わたくしは知りません。」
「いったいそんならあなたは、なぜこんなところへかくれたのですか。」
デストゥパーゴはまっ青になりました。
「イーハトーヴォの警察ではファゼーロといっしょにあなたをさがしているのです。もうすっかり手配がついています。今夜はどうなってもあなたは捕まります。ファゼーロはどこにいるのです。」わたくしは思わず、うそをついてしまいました。
デストゥパーゴは、毒蛾のためにふくれておかしな格好になった顔でななめにわたくしを見ながら、ぶるぶるふるえて、まるで聞きとれないくらい早口に云いました。
「そんな筈はない、そんな筈はない。名誉にかけて、紳士の名誉にかけて。」
「なぜそんならあなたはこんなところへかくれたのです。」
デストゥパーゴはようやくふるえるのをやめて、しばらく考えていましたが、ようやく少しゆっくり云いました。
「わたくしは警察からは召喚《しょうかん》されただけで、それは旅行届を出して代人を出してある筈です。それに就ては署長に充分諒解を得てあります。警察では、わたくしに何の嫌疑もかけていない筈です。」
「そ
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