ではなくて、わざとみんなの邪魔をするようにうごきまわるのです。
 みんなは呆《あき》れてだんだんやめて、ぐるっとデストゥパーゴのまわりに立ってしまいました。するとデストゥパーゴはたった一人でふざけて踊りはじめました。しまいにはみんなの前を踏むようなかたちをして行ったり、いきなり喧嘩でも吹っかけるときのように、はねあがったり、みんなはそのたんびにざわざわ遁《に》げるようになりました。さっきの夏フロックを着た紳士が心配そうにもみ手をしながら何か云おうとするのですがデストゥパーゴはそれさえおどして引っこませてしまいました。楽隊はしばらくしかたなくやっていましたがとうとう呆れてやめてしまいました。するとデストゥパーゴも労れたように椅子へ坐って、
「おい、注げ。」と云いながらまたつづけざまに二杯ひっかけました。
 するとミーロの仲間らしいものが二人で出て来てミーロに云いました。
「おいミーロ、お前もせっかく来たんだから一つうたって聞かして呉んな。」
「みんなさっきから、うたったり踊ったりして、つかれてるんだから。」
 ミーロは、
「だめだよ。」と云ってその手をふりはらいましたが、実は、はじめから
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