うどその反対に明るく、まるで本当の石英ランプでできているようでした。
そしてよく見ますと、この前の晩みんなで云ったように、一々のあかしは小さな白い蛾《が》のかたちのあかしから出来て、それが実に立派にかがやいて居りました。処々には、せいの高い赤いあかりもりんと灯り、その柄《え》の所には緑いろのしゃんとした葉もついていたのです。ファゼーロはすばやくその樺の木にのぼっていました。そしてしばらく野原の西の方をながめていましたが、いきなりぶらさがってはねておりて来ました。
「次のしるしはもう見えないんだ。けれども広場はちょうどここからまっすぐ西になっている筈だから、あの雲の少し明るいところを目あてにして歩いて行こう。もうそんなに遠くないんだから。」
わたくしどもはまたあるきだしました。俄かにどこからか甲虫の鋼《はがね》の翅がりいんりいんと空中に張るような音がたくさん聞えてきました。
その音にまじってたしかに別の楽器や人のがやがや云う声が、時々ちらっときこえてまたわからなくなりました。
しばらく行ってファゼーロがいきなり立ちどまって、わたくしの腕をつかみながら、西の野原のはてを指しました。
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